犬山城保存活用計画策定委員会の第1回の会議が2019年8月23日(金)に行われました。
その会議を傍聴してきましたので、今回はそのレポートをします。
犬山城が今後気になる方はぜひお読みください。
第1回犬山城保存活用計画策定委員会
ついに犬山城も保存活用計画を策定する時期になりました。
これから2年間かけて保存活用計画を策定し、それによって今後の国宝犬山城天守及び史跡犬山城跡の整備方針が確定します。
犬山城保存活用計画策定委員会というのは、この方針を示す計画を作る委員会で、犬山市の附属機関です。
それでは第1回の会議の様子を簡単にレポートです。
犬山城保存活用計画ってなに?
まず初めに、『犬山城保存活用計画』というのが何かについて簡単に説明します。
正式には『国宝犬山城天守・史跡犬山城跡保存活用計画』という名前になるらしいです。
タイトルについて、会議の中でも間違いのないように正しくつけようという意見が出ていました。
犬山城は、次の二つから成り立っています。
- 国宝犬山城天守
- 史跡犬山城跡
です。
史跡犬山城跡は平成30年に国指定を受けたばかりです。
文化庁の方針により、史跡や国宝については保存活用計画を策定し、その計画に基づいて保存や整備などを実施することが求められています。
保存活用計画とは簡単に言うと、その国宝や史跡を今後どのように整備していくのか、どのように活用していくのか、という大きな方針を示すものです。
犬山城保存活用計画を策定するメンバー
犬山城保存活用計画は誰が作るのかというのは一つ重要なポイントになります。
策定委員会の委員は以下の通りです。
学識経験者
氏名 | 所属など | 所属委員会 |
安藤直人 | 東京大学名誉教授 | 犬山城修理委員会 |
白水正 | 公益財団法人犬山城白帝文庫歴史文化館長 | 犬山城修理委員会 |
鈴木正貴 | 愛知県埋蔵文化財センター主任専門員 | 犬山城城郭調査委員会 |
千田嘉博 | 奈良大学教授 | 犬山城城郭調査委員会 |
高瀬要一 | 元奈良文化財研究所文化遺産部長 | 犬山城城郭調査委員会 |
麓和善 | 名古屋工業大学大学院教授 | 犬山城修理委員会 犬山城城郭調査委員会 |
麓先生が委員長を務められます。
所有者
氏名 | 所属など | 所属委員会 |
岡地喜代春 | 宗教法人針綱神社代表役員 | |
成瀬淳子 | 公益財団法人犬山城白帝文庫理事長 | 犬山城管理委員会 |
成瀬正浩 | 個人 | |
水谷守 | 宗教法人三光稲荷神社代表役員 | |
宮田昭男 | 公益財団法人犬山城白帝文庫副理事長 | 犬山城管理委員会 |
※五十音順、敬称略
その他、助言者として、
文化庁文化資源活用課、文化財第二課
愛知県教育委員会生涯学習課文化財保護室
です。
このメンバーを見ると、数年前まで実施していた犬山城総合調査の城郭調査委員会から4名が、引き続きこの計画策定委員会に入られています。
また犬山城修理委員会からも引き続き委員が選出されています。
いずれの方たちも専門分野での第一任者ですので、犬山城保存活用計画の策定はには心強い委員が選出されたと思います。
この中で注目はやはり、麓先生ですね。
建築系、文化財系の第一人者の先生です。
講演でも犬山城天守の構造について面白い話をされていましたし、建造年代についても少し言及されていましたので注目です。
また、千田先生はお城関係の雑誌やテレビなどでよく見かけると思いますが、今やインフルエンサーとなっています。
犬山城についてもどのように考えてみえるのか注目です。
犬山城保存活用計画策定のスケジュール
保存活用計画策定の中で一番気になるところは、この策定がいつどのように行われ、決定されるかということです。
もう一つ気になるのは、国宝犬山城天守と国史跡犬山城跡のそれぞれの保存活用をどのように行なっていくのかということです。
- 保存活用計画は、いつどのように策定され、決定するのか?
- 国宝犬山城天守と、国史跡犬山城跡のそれぞれの保存活用をどのように行うのか?
それでは順番に見ていきたいと思います。
まず計画策定のスケジュールについてですが、令和元年8月に第1回の策定委員会が開かれました。
第2回は11月の予定です。
第3回の委員会は令和2年の2月に行われ、建造物の保存活用計画と最終承認の予定となっています。
次に運営や政策の実施計画などについては、令和2年7月に第1回の委員会、10月に第2回の委員会を経て、令和3年1月に第3回の委員会をもって保存活用計画の全体の承認を得るという計画です。
つまり令和頑年度と令和2年度の2カ年、合計6回の委員会を開き、そこで保存活用計画の最終承認を得るというスケジュールです。
ということは令和3年の3月には保存活用計画の全容が明らかになり、その計画に基づいて施策を実施していくという流れになるわけです。
保存活用計画の最終決定は令和3年3月(予定)。
保存活用計画の内容
肝心要の計画の内容はどのようになってるのかと言うと、まだこれから策定するためほとんどの内容が見えていません。
重要なところだけピックアップして解説をしてみます。
繰り返しになりますが、まずは保存活用計画には、犬山城の場合は国宝犬山城天守と国史跡犬山城跡の両方が対象となっています。
このため管理団体である犬山市が計画策定の主体となって、所有者や有識者の方々と協議しながら計画を策定する流れです。
犬山城の今後の保存活用にあたっての指針となる基本的な、しかもとても大事な計画です。
計画の記載事項で大事なところとしては、保存活用、整備、運営・体制に関する現状と課題を整理した上で、保存活用の基本方針や計画実現のための運営体制を整備することです。
また建物については、昨今問題となっている防災防犯に関する事項についても記載する予定とのことです。
まとめると以下の通りです。
- 犬山城天守と国史跡犬山城跡の両方が対象
- 現状の把握と調査
- 保存活用、整備の方針と計画
- 保存活用の基本方針や計画実現のための運営体制
- 防災、防犯に関する事項
まだ具体的な計画に至っていないのでとても漠然とした解説になってしまいました。すみません。
会議中のディスカッション
第1回犬山城保存活用計画策定委員会でのディスカッションについて、こちらピックアップして解説します。
- 国宝犬山城天守と史跡犬山城跡の両方が含まれる計画にしなければいけない
- 犬山城跡の調査・研究も計画に盛り込むべき
- 大手門跡の扱い
- 名鉄犬山ホテルの建て替えに伴う外堀跡の扱い
一つ目。
重要な話題として、国宝犬山城天守と史跡犬山城跡の両方が含まれる計画にしなければいけないということです。
これは委員長に選任された麓先生から説明がありましたが、従来は建物である天守と史跡というのは別々に保存活用計画を策定し、それぞれがそれに基づいて計画を遂行していく、というのがベースになっていました。
しかしそれらを分けて考えることが難しい部分もあることから、文化庁の新たな方針として、犬山城の場合でいうと国宝犬山城天守と史跡犬山城跡を一つの保存活用計画の中で、統括的に計画を作っていく、という流れとなりました。
麓先生の話によると、これは全国でも初めての試みのようです。
二つ目。
次に議論になったことは、現在の犬山城跡については調査研究が十分に行われていないため、どこをどのように保存し活用していくのかということの議論がまだできないのではないかということです。
10年ほどかけて総合調査を行ってきましたが、それは言うなれば国史跡の指定を受けるために最低限必要な調査だったのでしょう。
今後、保存活用していくためには、現状がどうなっているのかをまず調査する必要があること、そしてそれに基づいてどこを整備・復元していくのかというディスカッションをしていくということが求められます。
現在でも調査などは継続的に行われているようで、石垣の調査についても複数年にわたって行われているようです。
今までの成果も含めて、今後どこを調査していくのかということについても計画に盛り込む必要がありそうです。
市の考えとしておおよそのことは頭にはあるのかもしれませんが、実際調査をしてみないとわからないことも多々あるはずなので、今後しっかりと調査を行った上でどこをどのように整備・復元していくのか、どうやって保存していくのかという議論につなげてもらいたいです。
三つ目
大手門跡に建てられている福祉会館の取り扱いについてです。
福祉会館の解体は既に計画されていて、令和2年度より実行されると思われますが、それに際して調査などを行い、改めて国の史跡に追加指定する流れのようです。
ここは、福祉会館の解体工事が進んでいくと改めて見えてくるところだと思います。
四つ目。
名鉄犬山ホテルが営業終了し、今後解体工事、建て替え工事が進められていきますが、その敷地内にある外堀跡について。
先方の見解としては、現状のまま保存していく方針だということで、犬山市教育委員会が見解を頂いているようです。
私有地のため、市などがどうこうと言える範囲ではないようですが、先方にも犬山城跡の重要な場所であるということをしっかりと認識してもらうように、今後も継続的に働きかけをして行ってもらいたいです。
実は筆者は数年前に、勝手に保存活用計画を立てています。
これぐらいのことはできるでしょうという提言も含めて。
記事が古いので読みにくいところもあるかと思いますが、併せて見ていただけるとよいかと。近いうちにまとめなおしたいと思いますが。
『犬山城、復元計画!』を提言します。これで犬山城は凄いことになる。
まとめ
犬山城保存活用計画策定委員会の第1回会議が開かれ、傍聴をさせていただきました。
今回は委員の方々も初会合ということもあって、顔合わせと今後の流れについての話が主流だったように感じます。
犬山市教育委員会が主となって計画の策定を進めていくことは間違いありませんが、議論の中でもあったように調査が不十分のところが多々あることは否めません。
それらの調査も含めて、今後の計画策定やそれらの調査も含めてどのように進めていくのが大変注目されるところです。
今回の会議の議事録が市のホームページに掲載されていますので、そちらも参考にご覧ください。
筆者は次回以降の会議もできるだけ傍聴して、どのような計画になっていくのか注視したいと思います。
ということで、第1回犬山城保存活用計画策定委員会のレポートでした。
じゃあね🖐️
2019年11月16日
犬山城マイスター!たかまる。
やはり、こういう物が決定してしまう前に、このHPを市民の意見として提出しても良いかとw
あと、愛知県も巻き込んで、私有地となっている城域を買い戻して、犬山市民の為、ひいては愛知県の為にも三の丸まで含めた北側、木曽川までの城域の復活ですね。
移住を余儀なくされる方もみえますが、後々犬山市民の為にもなりますよ。
姫路城があれだけもてはやされるのは、あれだけの城域が残存していて、お城の雰囲気を味わえるからです。犬山城も天守のみしかないし、神社があるのも減点です。
移転出来る物は移転して、後世に残しましょう。他所では学校や役所など移転していますから。宗教法人が頑として動かないのはイケません。岐阜では天理教も移転してますから。
ソレックスさん、コメントありがとうございます。
犬山城をどのような姿にしていくことが良いのか、市民のレベルでもしっかりと議論が必要ですね。